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田辺 紫

Author:田辺 紫
湘南在住コピーライター。All About横浜ガイドを務めています。横浜・鎌倉で、見た・聞いた・食べたことなどをさくっと紹介します。よろしくお願いします。

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2009年5月、All About 横浜(旧)ガイド日記から引越ししました。画像がないページもありますが、ご了承ください。

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横浜美術館に奈良美智展がカムバック! 2001年に横浜美術館で国内初の大規模個展を開催した奈良美智(なら よしとも)の展覧会が、7月14日(土)~9月23日(日)まで、横浜美術館で開催されます。タイトルは、奈良美智:「君や 僕に ちょっと似ている」。内覧会に参加させていただきましたので、そのようすをご紹介いたします。

まずは、奈良美智さん、逢坂恵理子館長、木村絵理子主任学芸員が登壇されたの記者会見のようすから。

奈良美智:「君や 僕に ちょっと似ている」 横浜美術館

木村主任学芸員による、本展の説明を箇条書きで紹介。
・グランドギャラリーの≪White Ghost≫2010以外の作品は、Cafe小倉山に展示されている作品も含め、本展のために、昨年の3月以降に制作された新作。
・彫刻の作品から、ペインティングへという流れで展示。暗闇から明るい光の世界へ、この1年間の奈良さんの制作のプロセスを表現している。
・本展は奈良さんが初めて制作した金属の彫刻が目玉。奈良さんの母校である愛知県立芸術大学に昨年9月~2月まで滞在制作し、今年に入って鋳造された。
・奈良さんのスタジオ(栃木県・那須塩原)を再現したインスタレーションがある。震災後の奈良さんの制作や精神的な支えとなったもの、創作の原点にふれることができるもの、奈良さんの震災後の再スタートを象徴する大型のペインティングなどが展示されている。
・アーティストトーク、トークシリーズを開催。奈良さんの作品をさまざまな視点から語る。

奈良美智:「君や 僕に ちょっと似ている」 横浜美術館
▲初めの部屋には、奈良さん初挑戦のブロンズ像、白銅像が並んでいます。いきなり後ろ向きに展示されているのは、顔は重要ではない、質感をどう表現するかに興味がある、という奈良さんの発言を受けてのことなのだとか。奈良さんの指紋がついていて、奈良さんの手を通して生まれた作品であることが強く感じられます

逢坂館長から、同時開催のコレクション展「人の形を見る―不思議な具象」展についての説明。
・「顔」「人体」など人の形に焦点を絞って、コレクション展を構成した。
・ピカソやセザンヌの作品とともに、奈良さんの過去の作品を展示。
・コレクション展の方にも、奈良さんの新作があるので、お見逃しなく。

奈良さんのあいさつ。
「えー、奈良美智です。今日はお忙しいなか、お集まりいただき、ありがとうございます。ええと……とりたてて、聞かれる前に言うことがないので、質問があったら何でも答えようと思いますので……今日は来てくれてありがとうございます」

奈良美智:「君や 僕に ちょっと似ている」 横浜美術館

ということで、質疑応答へ。最初に質問された台湾の媒体の記者さんが、そこにいた誰もが聞きたかったでしょう、3つの質問を奈良さんに投げかけました。その奈良さんの答えに、とっても感動して、うるうるしてしまいました、私。ぜひ、書き留めておきたいと思います。長文ですが、よろしければ、お付き合いください。
Q1:この展覧会は巡回するとのことですが、アジアのどの国を巡回されるのでしょうか。

A1:アジア・オセアニアを巡回します。だいたいの日程まで決定しているのは、シンガポールとブリスベンです。詳細が決まっていませんが、台北、バンコク、ソウル、マニラなど。そのあたりが展覧会を回していく限界であろうと。そういう感じになっています。自分としては、ベトナムとかカンボジアとか、ミャンマーとかも行きたいのですが……。

どちらかというと、アメリカとかヨーロッパでは見せたいとは思っていなくて、その国の人たちは見に来てくれればいいやと。これまで西洋で発表しすぎたというか、自分がそっちの方を見ている間に、アジアの後輩とかが僕の背中を見ていてくれていて、自分はまったく気づいていなくて。アジアの国に行った時に、みんなからの接し方というか、接され方というか、「あぁ、みんなそこまで気にかけてくれていたんだ」と。日本人ってアジアの代表みたいに思ってくれていて、回れ右して、アジアでちゃんと見せたいなというのがあって、こういうツアーに至った訳で。そういう感じです。

Q2:震災は、制作にどのような影響がありましたか。

A2:震災の影響は日本人だったら誰でもあると思うんですけど、僕にとってもショックな出来事で……。その前に、僕の父が、震災の1年前ぐらい前に亡くなって、また身近な友人の死もあり、最後に震災で空虚な感情に襲われました。

被災した人々のため、また被災地のために何かする、というのは頭に浮かばず、まずは自分がしっかりしなきゃと……。僕が住んでいるところは、福島の原子力発電所のところから、ちょうど100km圏内なんです。福島と栃木の県境で、地震自体も強かったし、被害も大きかったのです。被災地に比べると、まったくぜんぜん、なんでもないや、みたいな感じではあるのですが。被害はありました。

で、絵を描くことができなくなりました。筆を持つとか、鉛筆を持つとか、それよりももっと生きててはじめてできることだし、幸せだったからできたことなのだなと思いました。その時に、おぼろげに僕が思ったことが、古代の人が洞窟に描いた狩りの絵のこと。腹が減っている時に描いたのか、狩りをしてお腹がいっぱいになって描いたのか。僕は、食った後じゃないかと。満たされた後で、また食いたいから望みを託すために描いた。あるいは、狩りをして食べて、それが生きる喜びだった。それを描きとめようとして、描いた。満たされて初めて行われる儀式というのが、モノを記録する、写すということ。「腹が減っています」というのは、記録しないと思うんですよね。一回満足したから、次に腹が減った、食べたい。だから狩りをしている絵を描いたら、動物がとれるかもしれないと。そんなことを、おぼろげに考えました。

で、そんなことを考えながら、いろんな人たちが被災地に行って、特に、音楽やっている人とか、コメディアンの方々とかが行って、被災地を元気づけている。それを見て、あぁ、美術ってなんて力がないものだ、と思っていたんですが、その後、人々が満たされていくに従って、ゼッタイに必要になるもの、そこに美術があるんじゃないだろうか。そう思って、もう一度、筆というか、鉛筆をとることができました。でも、そこではまだ絵は描くことがその時はできなくて、どうにもこうにも。白いキャンバスを前に、筆というか、自分の手とキャンバスの間に、筆という道具が入るのが不自然で、それが自分の中で、うまく言えないんですけど、許せなくて。そうこうしているうちに、3月4月5月6月となって、ロクな作品も描けず、もんもんとしていたんです。

が、ちょうど、水戸芸術館というところが震災後、リニューアルしてオープンするということで、ある作家の作品展を予定していたんですけど、放射能が怖くてその人は来られなくて、展覧会ができなくなった。それで、これまでに展示した人を集めて、グループ展をやろうということで、企画が来たんですね。僕ももちろん、出しますと。じゃあ、何を出したらいいかがわからない。今、描いてできた絵というのは、ぜんぜん自分のものにもなってなくて、見せることを考えることすら恥ずかしい。

で、どうしたかっていうと、家の中にあるものを出そうと。家の中にあるものを集めてみようと。ウチの玄関にある飾り棚にヘンな人形がばぁーっと並んでいるものだったり、今まで撮った写真を焼いたものに額をつけたり、描きかけの絵だったり。そうこうしているうちに、木に描いたものが出てきたんで、飾りました。「命」って書いてある絵と、「NO NUKES」って書いてある絵、です。

奈良美智:「君や 僕に ちょっと似ている」 横浜美術館
▲奈良美智のスタジオにあったものを並べたインスタレーション

そして、封筒が山になっているオブジェというか、それにちょこっとおもちゃの家がのっかっているものがあるんですが、あれは、ポストの脇に置いてあるやつで、いろいろな雑誌が送られてくると、封筒を開けて、封筒はそこに置くと。いつの間にか、封筒が何年分かはわからないんですけど……那須に来てからだから、7年分?……で、そこの上に家を置いていた。で、水戸に出す作品を、どれを出そうかと部屋の中、家の中を探し回って、積み重なっていった(封筒とおもちゃの)家を見ていたら、何となく愛おしいというか、自分の生きている時間の蓄積というか、そういうものに見えてきたんです。可笑しくなって、すごい笑えてきて、おもしろいなと。なんでもないモノでも、力をくれるんだなと。そこで吹っ切れました。

その夏の終わりに、僕の母校である愛知県立芸術大学でレジデンスに行きます。それ自体は前々から決まっていて、「来てくれ」って言われたから行ったのですが、大抵の人は1週間ぐらいで帰ったり、音楽の人はピアノを弾いて帰ったりするんですが、なるべく長くいようと思って、8月の末から3月上旬までいました。そこで何をしたかというと、彫刻作品。粘土で作っていたんです。真っ白なキャンバスに筆を使って作業するというのは、パスしました。土というか粘土。物質感のある塊がそこにあると。加工される前のもの。キャンバスは加工されたものです。そうでなくて、生(なま)の素材。ヘラとかナイフとかを使うんじゃなく、闘うというか、格闘技しているような、そんな感じで制作していこうと。そうすると、身体が勝手に動いてくれて、作品がどんどんできていって、塑像が完成したのが2月末なんです。その後は、職人さんが鋳造所で鋳造してくれるんで、3月から絵を描きはじめました。

そこで、なぜか絵が描けるようになっていて、白黒の鉛筆のドローイングを描いていったんですが。絵が描けるようになりました。最後の部屋、絵がぽつんぽつんとある部屋ですが、今までは描いてきた表層だけをみんなに見せていて、そこに至る過程は見える人だけにしか見えなくていいや……つまり自分のことなんですけど……そう思っていたんです。でも、今回は、最後の部屋にある絵を見ればわかると思うんですけど、途中に見える感じ、いろいろなレイヤーが混ざってみえる、未完成みたいな感じ。その未完成を完成にする。初めて、そういうことを意識しましたね。

奈良美智:「君や 僕に ちょっと似ている」 横浜美術館

それを描いた後、板に描いた……子ども部屋みたいな部屋がありましたよね。木の、粗末な額がつけられた。板に描いたり、段ボールに色鉛筆で描いたり。皆さんが持っている、僕が描く絵のイメージだと思うんですけど、やっとああいう絵を描くことができるようになった。本当に、震災の後は、今まで描いていた、あの手の絵が許せない、すべてではないですが、なんか、こんなでいいかなと思って描いたような絵があって、もうああいう感じの絵が描けないんじゃないかと思っていた。最後の部屋にあった、絵画的な作品を描くことを通じて、また描けるようになった。そして、自分の足元をちゃんと見られるようになった。だから、震災は悲惨な出来事であったし、いろんな人が落ち込んだと思うんだけど、改めて大事なものを考えさせてくれるきっかけにもなったと思います。

奈良美智:「君や 僕に ちょっと似ている」 横浜美術館
▲手前の赤いじゅうたんが敷かれた作品は、座ってもいいベンチになっています

Q3:原発反対のために使われた絵がありますが、あれはなぜ? 誰が?

A3:あれは、僕も知らないんですけど……。あの、おさげの子が「NO NUKES」っていうプラカードを持っている絵なんですけど、1997年に描いたものなんです。最初に、僕が見たのは、誰かが画像を送ってきてくれたんですけど、タイの反核デモで使われていると。で、それを見た日本の人が使い始めて、心ある人が「これは使っていいのか」と聞いていたので、心ある僕が自由に使ってください、それを商売で使わなければ、自由に使ってくださいと、ツイッターに書きました。僕もデモに行ったんですけど、あまりにも多くの人がそれを持っているので、すごい真剣にデモに参加したつもりなのに、はずかしくて下を向いていたんですけど。そういう経過で広まっていきました。

その時に思ったのは、デモでそれを持っている人が、普通の人たち。デモというのは、組織が先導していくものだと思っていたので。家族連れだったり、親子だったり、学生、仕事帰りのサラリーマン、OL、仕事がないような人だったり。そういう人たちが、自ら、自発的に、自然にデモに参加している、そういう感じがしました。僕は、絵を描いた時、デモに使おうとか、スローガンにしようだとか、自分があれを持って行動しようとかそういうことは全く思っていなくて、日常の中で感じることの一部として、自分の中から出てきたものを描いたんですね。そういう自然に出てきたものですから、自発的に、自然に、手にとることができた。強制されたものではなくて。たぶん、そうじゃないかなと。自然にものが出てくることっていうのは、こういうことなんだなと、自覚させてくれたり、発見させてくれたり、いい機会でした。

もう一つだけ、自分のことを。最後の部屋にあった《春少女》というピンクの絵があるんですけど、震災以降、原発事故とか、すべての自分のことを……いろんなレイヤーですね……を一つにまとめることができた、そういうブレを色の中に込めた。だから、絵画的な描き方になっているんですよ。でてきたものなんですよ。その原発反対の「NO NUKES2012」という本が、たぶん、今日世の中に出ていると思うんですが、坂本龍一さんが中心になって作られた本があるんですが、表紙に使いたいと。そのために描いた絵ではないんですが、そういうイメージが自然に僕の絵の中にあったのか。すごくうれしく感じました。あまりリアクションに対してそこまでうれしくなったことはないんだけど、伝わるってこういうことなんだなと。メッセージというか、気持ち的なものなんですけど。

以上が、台湾の記者さんへの奈良さんの質疑応答でした。この質疑応答を聞いた後に展覧会を見させてもらったので、より一層、(作品をつくる過程のデッサンや映像などもあったのですが)奈良さんのこころの変化を感じられたような気がしました。奈良さんの旧作と新作が、横浜美術館のコレクションとともに展示されたコレクション展も、とってもよかったです。いつ行っても、たくさんの人が訪れているとは思いますが、もう一度、じっくりと鑑賞したいと思います。

奈良美智:「君や 僕に ちょっと似ている」 横浜美術館
▲併設の「cafe小倉山」にも、奈良さんの作品が展示されていますので、お見逃しなく! また、企画展に合わせた限定メニューも。写真は「リンゴ☆パフェ」(735円)。奈良さんが青森出身で、展覧会タイトルがビートルズの「Nowhereman」の歌詞に登場するフレーズということで、このネーミングに。このほか、奈良さんが大好きな野菜たっぷりカレー「いろどり野菜カレー」(900円)もあります。

■奈良美智:君や 僕に ちょっと似ている
会期:2012年7月14日(土)~9月23日(日) 10:00~18:00(入館は17:30まで)
場所:横浜美術館
休館日:木曜
料金:当日一般1100円、大学・高校生700円、中学生400円
※小学生以下無料 ※以後、青森、熊本へ巡回
※おとな&子どもの鑑賞優待 9月8日(土)、9日(日)15日(土)、16日(日)は保護者1100円→550円に
展覧会公式サイト→http://www.nara2012-13.org/
横浜美術館公式サイト→http://www.yaf.or.jp/yma/
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2012/07/14(土) 03:06 | コメント:0 | トラックバック:0 |
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